2012年12月10日月曜日

原発は? 消費税は? TPPは? もし自民党単独政権が誕生しても、重要課題が動き出すのは来年7月の参院選からだ!{現代ビジネス}

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長谷川幸洋「ニュースの深層
原発は? 消費税は? TPPは? もし自民党単独政権が誕生しても、重要課題が動き出すのは来年7月の参院選からだ!
2012年12月07日(金) 長谷川 幸洋
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▼全文引用

(1)
 12月5日付の新聞各紙朝刊が一斉に衆院選の序盤情勢を報じている。どこも自民党が有利に戦いを進めているとして、朝日、毎日、読売、日経の4紙は「自民が単独過半数の勢い」という見通しを打ち出した。
 半数前後の有権者がまだ態度を決めていないので、この層が動くと、情勢が大きく変わる可能性もある。だが、ここでは自民党が単独過半数を獲得すると、主要課題について政治はどう動くか考えてみよう。まず原発エネルギー政策だ。

規制委の人事をやり直すか否かが試金石

自民党は原発について原子力規制委員会の判断を優先し、すべての原発について再稼働の可否は3年以内に結論を出すとしている。再生可能エネルギー と省エネについても3年間、最大限の推進を図る構えだ。そのうえで、中長期のエネルギーについて「10年以内に持続可能な電源構成のベストミックスを確立 する」という。
 規制委がOKといえば、原発を動かす可能性が高いが、いまの段階で「全部動かす」と決めたわけでもない。逆に言えば、規制委がNOなら、全部止める可能性も理屈の上では残っている。となると、鍵を握るのは規制委である。

(2)
野田佳彦政権が決めた原子力規制委員会のメンバーは田中俊一委員長を含めて、少なくとも3人は原子力推進の立場に立つ「原子力ムラ」の人間である。人選について民主党内からも批判があり、野田政権は造反を恐れて国会承認の手続きに入れなかった。
 自民党政権になったら、ここをどうするのか。野田政権が選んだメンバーで良しとして、そのまま国会承認を求めるのか。そうであれば、自民党が衆院で過半数を握り、参院も自民と民主で過半数を超えるので、規制委人事は承認される可能性が高くなる。
 再稼働を判断するいまの基準はあくまで暫定なので、規制委は来年中に新たな本格的基準を作って再稼働を判断するだろう。それとは別に、活断層が敷地内にある疑いが指摘されている大飯原発については別途、安全を判断する運びである。
 いまの規制委を良しとせず、衆院で人事を否決したうえ、あらためて人選をやり直す可能性もある。そうなると、自民党がゼロから体制を作り直す格好だ。メンバーを入れ替えたとしても、やはり規制委を原発推進派で固めるなら、再稼働に向けて大きく傾く。
 いずれにせよ自民党は規制委をいまのままでいくのか、それとも人事をやり直すのか。記者会見でも質問が出ず、この点がはっきりしていない。自民党の原発エネルギー政策を占う試金石になるポイントである。ぜひ投票日までに明らかにしてもらいたい。

鍵は13年春の日銀総裁、副総裁人事

次に消費税について。これは景気と連動する問題である。
安倍晋三総裁は民主、公明の両党とまとめた社会保障と税の3党合意は守る、と言ってきた。一方で「デフレが続いている現状では増税できない」という立場も繰り返し表明している。つまり、3党合意が決めたとおり、2014年4月から増税するかどうかは景気次第である。
 デフレ脱却のためには、少なくとも消費者物価上昇率が1%以上で落ち着いていなければならないだろう。1%以下では話にならない。13年夏ごろに引き上げを実施するかどうか判断するとして、それまでに1%以上に達しているかといえば、これは相当難しい。
 日銀が10月31日に公表した「経済・物価情勢の展望」でも、2013年度に消費者物価上昇率はプラス0.2%から0.6%、政策委員見通しの中 央値でプラス0.4%である。足元の景気は秋以降、下り坂だ。米国、欧州、中国を見渡しても世界経済は不透明感が強く、日本の景気が単独で上向く材料はほ とんどない。

(3)
 だからこそ安倍が強調しているように、2%(できればそれ以上)の物価安定目標と大胆な金融緩和が必要なのだが、当の日銀と財務省がそれに反発しているようでは、とても1%以上への物価安定は望めない。
財務省はいったいデフレを克服して消費税を引き上げたいのか、それともデフレを続けて消費税引き上げが先送りになってもいいと考えているのか。目 先の長期金利上昇ばかりを心配して、肝心かなめのデフレ克服という最重要課題に正面から立ち向かおうとしないのでは、悲願である消費増税も消し飛んでしま うだろう。
 財政の金庫番ではあっても、金融を含めた経済政策に対する音痴ぶりが結局、自分の首を締めているのに気付かないのだ。
 鍵は13年3月の日銀副総裁人事(2人)と4月の総裁人事である。ここで2%の物価安定目標と金融緩和に積極的な総裁、副総裁が選ばれれば、株式と為替市場は政策を先取りして、一段の株高円安に動く可能性が高い。それは当然、景気にプラスに働く。
 金融緩和が「資産バブルを招く」というような論者(たとえば『週刊ポスト』12月14日号で私と対談した小幡績慶大准教授)もいるが、資産価格が 跳ね上がる前に実体経済が上向くはずだ。世の中デフレでみんな倹約しているのに、マンションの値段だけが暴騰するような事態が起きるわけがない。当たり前 だ。
 景気が良くなってきてから、さて消費税をどうするか、という話になるだろう。

TPPは「聖域あり、例外ありの関税撤廃交渉」

それから環太平洋連携協定(TPP)である。
 自民党は「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対します」というのが政権公約である。しかし「聖域なき関税撤廃」または「例外なき関税撤廃」というのは、あくまで参加国のスローガンである。
 どんな通商交渉もそうだが、交渉を始めるときに、最初から「例外ありの関税撤廃を目指す」などという話はない。最初からそんなことを言ったら 「じゃ、何を例外にするのか」「あれとこれだ」「それじゃダメだ。あれも入れろ、これも入れろ」という話になって、いつまで経っても実際の交渉が始まらな いからだ。

(4)
 まずは「聖域なき、例外なき自由化」という旗を掲げる。それで交渉をスタートしてから「ところで、ここは例外にすべきだ」という話が水面下でじわ じわと始まるのである。言い換えれば、通商交渉はいつだって「例外扱いをどうするか」をめぐる交渉なのだ。そこが核心である。こんなことは政府関係者なら だれだって分かっているイロハのイだ。
 だが、そういう舞台裏のホントの話を選挙でおおっぴらに有権者に言うわけにはいかないから、自民党も建前で「聖域なき関税撤廃なら反対です」と言っているにすぎない。政権を握れば、自民党も本音でまじめに考えるはずだ。
 いずれTPPも「聖域あり、例外ありの関税撤廃交渉」であることがあきらかになるだろう。米国だって砂糖や乳製品など例外にしたい品目を抱えている。そうなれば自民党も交渉に入る条件が整う。ただし、それにはもう少し時間がかかる。
 そもそもTPPは当初、昨年秋にも妥結すると言われていた。ところが、この冬になってもまとまらない。いま「来年中には妥結か」などと言われてい るが、それもどうなるかわからない。何度もあった世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉がそうであったように、大きな通商交渉は新聞が書く日程通りに話 がまとまった試しがないのだ。だから時間はまだある。

来年7月までは安全運転か

以上、原発エネルギーと消費税、TPPについて触れてみた。実際には自民党政権ができても、重要判断は来年夏以降に先送りする可能性が高い。というのは来年7月に参院選があるからだ。
 自民党単独では、いまの参院のねじれ状況を打開できない。重要課題を無理やり動かして参院で立ち往生するくらいなら「参院選の結果が出るまで安全運転でいこう」と考えても不思議ではない。むしろ、そのほうが自然である。
 そういう情勢をみて、いまの与党内には国民新党を含めて、早くも自民党にラブコールを送る向きもある。「我々と一緒になれば、安定政権になって参院でも法案が通りますよ」というお誘いだ。さて、そんな甘い話が通るかどうか。
(文中敬称略)

 
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