2012年12月1日土曜日

(嘉田滋賀県知事)クローズアップ2012:嘉田知事、新党結成 三つどもえ構図に一石 中小政党、利害一致{毎日新聞}

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(嘉田滋賀県知事)クローズアップ2012:嘉田知事、新党結成 三つどもえ構図に一石 中小政党、利害一致
毎日新聞 2012年11月28日 大阪朝刊
http://mainichi.jp/opinion/news/20121128ddn003010042000c.html
◇全文引


(1)
 滋賀県の嘉田由紀子知事が27日、日本未来の党の結党に踏み切ったのは、日本維新の会の「原発ゼロ」方 針の後退がきっかけだった。一方で、埋没を恐れた中小政党側からは「選挙の顔」として嘉田氏に期待する声があり、両者の思いが合致した。脱原発を求める国 民の声の受け皿になれれば、「民主VS自民・公明VS日本維新の会」という衆院選の構図に一石を投じる可能性が出てきた。【姜弘修、加藤明子、中島和哉、 平野光芳】
 嘉田氏は記者会見で「自民党は原発の安全神話を作り、事故への備えを怠り、福島事故に対する反省がな く、原発推進とも取れるマニフェストを発表した」と批判。そのうえで「(事故の)重い責任を感じることなく、経済性だけで原子力政策を推進することは国家 としての品格を失い、倫理上も許されない」と強調した。
 嘉田氏の脱原発への思いは強い。昨年3月の福島第1原発事故後、段階を踏んで原発を減らす「卒原発」を 提唱。今夏前には関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働問題で橋下徹大阪市長とともに言動が注目された。ただ、計画停電の恐れで再稼働を 限定的に認めざるを得ず、国や関電との交渉で「安全協定一つ結べない。かなり無力感を感じた」と話していた。
 再稼働問題で共同戦線を張った橋下氏が今月に入り、旧太陽の党との合流で「原発ゼロ」の旗を降ろしたこ とに「仲間を失った」(今月20日の会見)と落胆。知事周辺は「衆院選が終わったら、『自公維』政権ができて、原発問題は顧みられなくなる。その危機感か ら、知事は自分の政治生命をかける決断をしたのだろう」とみる。
 10月末の会見では「第三極」結集の動きに対し「イタリアで言えば中道左派、オリーブの木のようなものも一方で求められているのでは」と発言。衆院解散が早まったことで、自分が打って出るのは「先週末がタイムリミットだとは言っていた」(知事側近)という。
 そうした中、動いたのが国民の生活が第一の小沢一郎代表だった。小沢氏は当初、第三極が連携する「オ リーブの木」構想を目指していたが、維新との連携に失敗。同じく維新との合流ができなかった「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党(脱原発)」(共同 代表・河村たかし名古屋市長ら)との連携などにかじを切っていた。
 小沢氏はこれらの勢力結集のための「顔」として嘉田氏に期待。嘉田氏周辺は「10月ごろから知事への働きかけがあった」と明かす。
 小沢氏から党首への就任要請を受けた嘉田氏は、脱原発勢力の結集を条件に挙げていた。24日に嘉田氏と小沢氏の会談が行われ、結集に一定のめどがついたことから、新党旗揚げにつながった。

 (2)


 ただ、生活との合流で、小沢色が強まることへの抵抗感があるのも事実。党幹部の構成などはこれからの課題で、波乱要因もある。
 地方議員らが参加する「緑の党」の須黒奈緒共同代表は27日、「脱原発勢力がまとまることは意義がある」と歓迎したが、合流は考えていないとした。

 ◇維新、存在感に黄信号

「嘉田知事を中心とするグループはいきなり脱原発と言うが、いつまでにできるのか、誰もプランを持って いない」。27日、遊説先の山形県酒田市で、日本維新の会の橋下徹代表代行は、未来を強く批判した。さらに「どれだけ高い目標やスローガンを掲げても絶対 に実行できない。嘉田知事は政治グループを束ねた経験がない」とボルテージを上げた。
 橋下氏が警戒を強めるのは、「民主、自民、維新の三つどもえの構図を演出し、存在感を際立たせる」とい う維新の衆院選の戦術が揺らぎかねないからだ。27日の仙台市の遊説で「自民、民主、維新が並んでいる。同じ土俵に上がった」と訴えるなど、橋下氏は「2 大政党対維新」の対決を再三強調してきた。
 しかし、未来が存在感を発揮し始めれば、第三極勢力内での維新の優位もおぼつかなくなる。さらに、未来 に合流する生活と脱原発の両党に対し、維新は本拠地・大阪の5選挙区で競合、関東でも激突する。合流を断念したみんなとの選挙区のすみ分けも進まず、第三 極間のつぶし合いはさらに激化する。
 政策面でも、未来が前面に据える原発政策は維新のアキレスけんだ。「可及的速やかな原発廃止」 「2030年代原発ゼロ」などと訴えていた橋下氏だが、旧太陽の党との合流時の合意には「脱原発」の文言さえ外し、ブレーンからも批判が出ていた。未来の 代表代行に就任する飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長も、橋下氏のブレーンの一人。維新の松井一郎幹事長は27日夜、飯田氏の代表代行就任について報 道陣に問われ、「全然知らなかった。それならあまり(原発政策に)違いが出ないことになるかも……」と困惑を隠せなかった。
 「絶対に党首を受けるべきだ。原発問題を徹底して論戦しましょう」と26日に嘉田氏にメールで呼びか け、27日朝には民放の報道番組で「脱原発の方向は大賛成」と歩調を合わせてみせたものの、夜には徹底批判に転じた橋下氏。対応に苦慮がにじむが、29日 の維新の公約発表に向け、再び脱原発にかじを切るか決断を迫られている。

 ◇「地方行政甘くない」「国政へ関わりおかしくない」 兼職に知事ら賛否

 (3)

 

 嘉田氏は知事職を続けながら党首に就く意向だ。橋下徹大阪市長も日本維新の会代表を一時兼務し、現在も代表代行として党を事実上率いている。相次ぐ国政政党の党首と首長の兼務だが、その是非には議論がある。
 前宮城県知事の浅野史郎・慶応大教授(地方自治論)は「そもそも有権者は、県や市のためにしっかりと仕 事をしてもらいたいと首長を選ぶ。党首就任が、有権者の望みなのか疑問がある」と指摘する。仁坂吉伸和歌山県知事も27日の記者会見で、「首長はそれぞれ の選挙民から負託を受けている。私は県民のために100%献身する。あまり理解できない」。また、湯崎英彦広島県知事は同日の記者会見で「(私自身は)知 事職で手いっぱいだ。地方行政はそんなに甘いものじゃない」と苦言を呈した。
 一方、元神奈川県逗子市長の富野暉一郎龍谷大教授(地方自治論)は、「知事や市長は特別職であり、国政に関わることはおかしくない。国政への関与も政党の機関決定を通じてであり、党首が国会議員である必要はない」という。

 ◇未来政治塾の塾生擁立意向

嘉田氏は27日夜、滋賀県庁で記者団に、自らが塾長を務める「未来政治塾」の塾生を衆院選に擁立する意向を明らかにした。女性1人はほぼ決まっているという。
 ある塾生によると、約30人が24日に京都市内で集まり、塾生の擁立について議論した。「勉強したことを発揮するのは今しかないんじゃないか」と前向きな声が上がり、人選を進めている。

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